目まぐるしく変化を遂げるデザイン業界。
デザインにも流行り廃りがある中、デザイナーの働き方も変わってきていると感じます。
今までのサイト制作と言えば、「ホームページを作る」が一つの目的でした。
PCサイトがあれば十分という時代です。ですが現在は、ホームページを「つくれば十分」「知ってもらえれば十分」といった時代ではありません。
スマホが普及し、誰でも気軽にウェブサイトにアクセスできる時代。「モノを売る」「認知度を上げる」「継続的に使用してもらう」など、具体的な目標に対する成果が求められるようになりました。
そして、その成果を出すには、PDCAサイクルを用いた改善が必須です。
そこにデザイナーとしても貢献していくことが求められている今、デザイナーは自分が作ったデザインが、成果にどう影響するのかをしっかりと具体的に説明できる必要があります。
そこで、今回は「デザインが、どのように課題を解決するのか」を具体的に説明できる力を「説明力」と名付け、この必要不可欠な「説明力」について探ってみたいと思います。
求められる「説明力」
先ほども記述したように、具体的な成果を求められる以上は、デザイナーもデザインが成果にどう影響するのかを説明できる必要があります。「センスです」「直感です」「良い感じです」だけでは通らず、派手なデザイン・シンプルなデザイン一つ取っても、具体的な説明・意図が必要です。
また、意図を説明することで、クライアントやプロジェクトに関わるメンバーと過程や目的を共有できるので、認識のズレを回避することにも繋がります。そして、デザインの説明がより具体的でより緻密であればあるほど、そのデザインにはロジックが生まれ、クライアントからのデザイン・デザイナー自身への信頼性につながっていきます。
直感やセンスが活かされたデザインの「良い感じ」を否定するわけではありませんが、その「良い感じ」を生み出している論理的な根拠を、相手に理解できるようにしっかりと説明できる「説明力」が、今デザイナーに求められています。
まずは本質の理解
「説明力」を身につけるためには、まずクライアントから求められていること(ニーズ)の本質を理解することが重要です。クライアントからのニーズを引き出すためには、十分なヒアリングを行い、それをキーワード化していきます。そして、それらに優先順位をつけイメージに落とし込んでいくことで、大きな方向性を決めていくことができます。
ここまで行って、ようやく「なぜ、このデザインなのか」を、言葉で考えながら組み立てていくことが可能になります。大切なことは、ヒアリングで出てきた内容の「キーワード化」と「優先順位」を用いて、本質を理解していくことです。
「説明力」に必要なポイント
本質を理解できれば、それを解決するための要素を具体的に準備していきましょう。
視点の説明
まずは、視点。よく使われるターゲットのことです。
私はこう思う「I」の視点ではなく、あなたはこう思いますか?の「You」の視点でもありません。大切なことは、顧客(ターゲット)はこう思うだろうの「They」の視点が必要です。ターゲットの定義を明らかにして、具体的に説明できる準備を整えます。
与えるイメージの説明
ターゲットに対して、どのようなイメージが与えられるのかを整理します。
「洗練された印象を与えたい」「安心感のある印象を与えたい」などの目的がある場合、配色・トーン&マナー・キャッチコピー・メインビジュアル・写真など多くの要素の中で、どこがどの印象を与えているのか等を説明できるようにしておきましょう。特にメインビジュアルやキャッチコピーなどは、印象が大きく左右される要素になるので、入念に準備しておいた方がよいでしょう。
実績、事例の説明
目的に合った実績や参考事例を整理します。
例えばクライアントからの要望が「モノを売る」ことならば、
過去に「モノがよく売れた」と効果があった実績があれば、それは強い証明になります。
- ワンカラムにして見やすくしたこと
- ボタンを押しやすいデザインにしたこと
- 「お客様の声」を載せたこと
これらの理由で効果的だったため、今回もこのデザインにします!という説明ができます。
事例があると結果のイメージがしやすく、他のデザインとの違いや優位性を伝えることができるため、クライアントの目的に合った実績や事例を準備しましょう。
デザインに至る過程を共有しよう
具体的な説明をするための各要素の準備が整えば、あとはそれらをしっかりと丁寧に説明していくだけです。各種資料や参考事例や過去実績、イメージビジュアルなど、ときには市場調査やアンケートなど、できる限り多くのデザインを作る上で導いた素材をうまく使ってください。
デザインの成果物を作る力(デザイン力)に、具体的な説得力のある説明がプラスされることで、「いい加減なアイデアではなく、きちんとした目的がある」と論理的な根拠があることを伝えることができ、ただのデザインナーから、信頼された負荷価値のあるデザインナーへと変わっていくことでしょう。
デザインを視点やイメージに分けて説明すると伝わりやすい
まとめ
デザイナーにとってひらめきや個性は大事ですが、デザイン案だけを見せて「これでどうでしょうか?」という接し方は、もはや論外であり、日々明確な成果が求められている昨今、プロセスに裏打ちされたデザインは必須となってきています。
もちろん、クライアントの一番大切な評価基準は「結果」であることには間違いありませんが、その前段階として必要なプロセスを具体的に説明できる「説明力」に今回は着目しました。
なぜならば、「結果」は時に予測を裏切ります。しかし、プロセスは、裏切りません。準備するか、しないかだけの事実がそこにあるだけです。そしてその事実を、しっかりと伝える「説明力」。
ぜひ、この「説明力」を磨き、デザイン力+説明力で、成果物の良さを120%伝えてみてはいかがでしょうか。