「分析しても改善しないから。」「手間ばかりかかって意味ないよね。」「結局、攻めの施策しないと無駄だよね。」分析がうまくいっていない現場で聞こえてきそうな声です。分析の重要性が高らかに掲げられる近年においても、その重要性の認識や実施が不足している組織が後を絶ちません。
なぜ、あなたの組織では分析が機能しないのでしょうか?
なぜ、あなたの組織の分析は手間ばかりかかるのでしょうか?
今回はビジネスの現場で頻発する”分析は意味ない問題”について考えてみましょう。
あなたはなぜ分析を行うのか
分析は大切だから行わなければならない。ビジネスの現場において、この意見に真っ向から否定する方は既に絶滅危惧種でしょう。しかしながら、”分析がなぜ大切なのか”を尋ねても十人十色の回答が返ってきそうです。そこに分析は意味ない問題の原因が隠されているかもしれません。
分析の目的は意思決定にある
分析の目的は、データを判断材料に意思決定を下すことです。分析の”なぜ”はこの一言に集約されるため、よく知られているのですが、意思決定の”対象”が議論される場面は非常に少なく、多くの組織で意識改革が求められるものです。
・施策の良し悪しの評価を決定する
施策の評価を決定する、ということは分析の重要な機能です。あなたが現在行っている施策はうまくいっているのでしょうか?それともうまくいっていないでしょうか?施策の良し悪しの評価ができていなければ、改善も変化も望めません。先ほどの問いに答えられない場合、分析の方法を再考する必要があります。
・次の実施 or 停止施策を決定する
分析によって仮説をたて、それを検証するために施策を実施する。改善の王道パターンですが、どの施策を実施するのか、そして、”どの施策を停止する”のか、その意思決定を促すのも分析の機能です。特に、効果の上がっていない施策の中止に踏み込めない場面は多いので、無駄施策が多いと感じている方は停止の有無を決定するために分析に用いてみましょう。
意思決定をするために分析を実施する必要があります
分析ステップその1:現状把握
続いて分析のステップに焦点を当ててみましょう。
・数値を確認する
データ分析はデータを収集することから始まります。
あなたはどんな種類のデータを保持しているでしょうか?それは何についてのデータで、どれだけの期間が集計されていますか?分析の目的に対して、適切なデータを適切な量で集めましょう。
・数値を比較する
データが集まったら次はデータ同士の比較をしましょう。
データの比較は色々な切り口がありますので、分析担当者の手腕が試されるところです。期間によって比較させるのか、セグメントによって比較させるのか、どんな掛け合わせで比較をさせるのか、インサイト(気づき)を得られるまで色々なパターンを試してみましょう。
・数値の統計的傾向をみる
統計的な数値分析は今後の主流になるとみられ、実際にビッグデータやAI学習といった言葉は随分浸透してきました。また、数学に明るい方やプログラミング言語を扱う方にとって、統計的な分析はすでに当たり前のことかと思います。今後、重宝される分析手法ではあるのですが、専門家でない方にはなかなか踏み込めない領域かもしれません。とはいえ既存の手法やツールを用いてロジックの再現ができるものも増えてきましたので、是非会得してより高度な分析を行ってみてください。
分析ステップその2:施策考案
現状の把握が完了したら、具体的なアクションに落としていく作業が必要となります。数値的に示された事実をどう解釈して、何を行うのか、その決定も分析の重要な機能であるといえます。
・改善施策を練る
既存施策の継続を決定した場合、それをどの様に改善するのか分析を基に考えましょう。施策にどのような要素があり、どこに改善レバーがあるのかを分析結果から把握することによって、外さない打ち手を練っていきます。
・新施策を練る
既存施策ではカバーできないボトルネックが見つかった場合には、新たな施策によって改善を図らなければなりません。どの様な目標に向かって、どのような指標をコントロールしていかないければならいのか、分析によって適切に把握して進めましょう。
・施策の停止を行う
うまくいっていない施策の停止決定も分析の持つ役割の一つです。効果はよく分からないけれど今現在あるのだから使おう、といった状態にある無駄施策を分析によって特定し、施策の停止を行うことで予算やリソースの余剰を生み出せるかもしれません。
うまくいく分析は何が違う?
ここまでの分析の役割や機能は特別なことではないかと思います。では、なぜ”うまくいく分析”と”うまくいかない分析”が生まれてしまうのでしょうか。様々な原因は考えられますが、最も大きな要因は明確な目標の有無といえるでしょう。
目標のない分析はただの自己満足です
明確な目標がある
適切な分析には明確な目標が設定されています。目標とは「売上向上が目標です」といった曖昧なものではなく、XXか月後にXX円の売上を達成するために、今月のXX週目までにはXXの売上を達成する必要がある、といった数値と時間によって定義ができるものを指します。
・施策評価の判断基準が明確である
目標値が明確な場合、それを達成する為の要素・レバーも明らかになります。ですので、施策評価の判断基準が曖昧になることがありません。その結果、打ち手も客観的な選択ができるようになります。
1. 改善規模を考えた施策を選択できる
例えば、サイト導線がボロボロな状態でサイトへの流入数を上げる施策は本当に有効でしょうか?99%のシェアを獲得しているリスティング広告のキーワード精査は必要でしょうか?このような無駄な作業を避け、適切な改善レバーに取り組むためには明確な目標による判断基準が必要不可欠です。
2. 費用対効果を意識することができる
データ分析の現場では、理想の改善サイクルを構築するためにありとあらゆるデータを揃え、あらゆる相関を把握しようと試みる方が必ずいます。しかし、売上のたった3%しか占めない領域に25%の人員リソースを投下することが改善に繋がるでしょうか?投下したリソースに対する効果も、目標と判断基準が明確であれば見誤ることはありません。
上手くいかない分析は何が問題?
反対に、うまくいかない分析とはどのような問題が発生しているのでしょうか?下記に挙げられた三点は分析による改善が失敗する主要因であると考えられますので、あなたの会社ではこのような事態に陥ってないかチェックしてみてください。
・目標が曖昧で売上増加までの明確な道筋(プロセス)がない
言い換えますと、数値に対する判断基準がないため、物事の優先順位が付けられない状態です。なぜそのような事態に陥ってしまう組織があるのでしょうか?
1. 些細な数値に固執してしまう
傾向が見ることができれば十分なデータにまで正確性を求め、議論が進まない組織が非常に多くあります。データの収集が100%正しいという事は、通常あり得ません。些事にこだわるあまり大局を見失わないデータへの感度が求められます。
2. 数値を全部取得しようとする
データの収集・管理・整形には非常に多くのコストがかかります。実際にデータアナリストが業務時間の多くをデータいじりに費やしている、というのはよく知られている事実です。よって、大きな意味を持たないデータを集めることにこだわってしまうと、データアナリストの時間的リソースが削られ、本質的な改善に取り組む事ができなくなります。
3. 施策の優先順位が立てられない
どのような施策にも改善策は存在します。しかし、どの施策を注視するかの優先順位は、特殊な場合を除き、改善規模に従うべきでしょう。適切な目標がない場合、優先順位を決定する為の指標がないため、注力する分析対象も当てずっぽうの選択となります。当然結果は運次第ですので精度は望めません。
まとめ
高度化するビジネス手法の流れの中、今後、データ分析はビジネスにおいて避けて通れないものとなっていくでしょう。分析は意味がない、と認識されている方、会社で分析の重要性が受け入れられていないとお悩みの方、にとって本記事が参考となり、組織内での分析が恒常化するキッカケになれば喜ばしい限りです。