「ペルソナ設定」という言葉は、ライティングやマーケティングに携わる方なら、必ず耳にする言葉です。初心者ライターにとっては、「なんとなく難しそうで正直面倒臭そう」なもの。そして、「いつか必ず学ばなければならない」ものです。
これを機に、是非「ペルソナ設定」について理解を深め、ライティングに取り入れられるようになってください。
ペルソナとは
そもそも、ペルソナとは一体何なのでしょうか?
ペルソナとは仮製品やサービスのユーザー像を仮想の人物として定義したものをいう。実際のユーザーにはさまざまな人が含まれるが、ペルソナではその中で最も重要な人物像に焦点を当てることによって、具体的なユーザー像をイメージしやすくなるメリットがある。
引用:コトバンク
つまり、「何かを売ったり紹介する時に考える、極めて具体的な人物像」が、ペルソナです。
これをライティングに置き換えると、ペルソナとは「あなたが最も文章を読んでほしい具体的な人物像」になります。
そしてペルソナ設計とは、文章を書く際に“誰”に向けて書くのかを考える工程を指しています。
ペルソナとターゲットを混同してはいけない
ペルソナとターゲットは、たびたび混同して使われる言葉です。
ライティングにおけるターゲットとは、その文章を読んでくれる大まかな人物像を指します。例えば美容品の紹介記事を書く際には、「30代女性、専業主婦、乾燥肌」このくらいの粒度でターゲットを設定します。
対してペルソナは、ターゲットにさらに具体的な人物像を設定していきます。
「32歳女性、東京都渋谷区在住、既婚、育児中(5歳/男児、2歳/女児)、専業主婦、世帯年収800万円、出産後スキンケアの時間が減った…」と、どんどん人物像に具体性を持たせていきます。
「ターゲット層」という大きな円の中心にいる人物が、「ペルソナ」だと考えるとわかりやすいですね。ですがここで、ターゲットを考えた上でわざわざペルソナまで考える必要があるのか?という疑問が浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
ペルソナを設定するメリットとは
ターゲットだけではなく、ペルソナまで設定するべき理由とは何なのでしょうか。
ここでは、先ほどの美容品の紹介記事を例に挙げてペルソナを設定する4つのメリットを解説します。
ユーザー目線でライティングできる
ペルソナを設定する1つめのメリットは、ユーザーの目線に立てることです。
・ターゲット:30代女性、専業主婦、乾燥肌/
これだけでは、ユーザー像はまだぼんやりとしています。ライティングの内容も、漠然と「紹介する美容品が乾燥に効くことを訴求しよう」くらいになってしまいます。
では、ペルソナを設定した場合はどうでしょうか。
・ペルソナ:32歳女性、東京都渋谷区在住、既婚、育児中(5歳/男児、2歳/女児)、専業主婦、世帯年収650万円、出産後スキンケアの時間が減った/
どんな風に美容品を紹介すればユーザーが反応してくれるかわかりそうです。例えば、「育児中で時間も気力もないだろうから、手軽に短時間でスキンケアができれば嬉しいだろうな」と、ユーザー目線に立って仮説を立てられますね。この仮説を元に、ユーザー目線に立った「お手軽時短スキンケア」訴求が生まれます。
他者とイメージを共有できる
上司や同僚・部下と一緒にライティングについて考える場合も、ペルソナ設定は役立ちます。
ターゲットだけを決めていた場合、意見がまとまらなかったり良いアイディアが出ない、
といった問題が起きます。
「俺はじっくり濃密スキンケアを訴求したいな」
「いやいや、お手軽時短スキンケアを訴求したいです」
メンバーがイメージを共有できていないと、
方向性が揃わず無意味な議論になることは想像に難くありません。
一方ペルソナが決まっている場合は、メンバー全員が1つのペルソナ像を共有しています。
この状態なら、ペルソナに対して最適な訴求を選ぶだけなので、メンバー全員が納得した上で「お手軽スキンケア訴求」に即決です。そうして余った時間は、訴求決めから発展した有意義な議論に使えるようになります。
提案や企画が通りやすくなる
上司やクライアントに対して、ライティングした内容を提案する際にもペルソナ設定が役立ちます。
ペルソナが適切に設定されていれば、ライティングの内容は根拠あるものになります。
「お手軽時短スキンケア訴求」を軸に書いた記事を提案するにしても、なんとなく思いついた結果なのか、設定したペルソナに基づいて考えたものなのか、で説得力が変わりますね。
ただし、ペルソナ設定自体が間違っている場合もあるので、提案が必要になる場合はペルソナを設定した段階で一度上司やクライアントに確認すると良いでしょう。
結果として、工数の短縮になる
こまでお伝えした3つのメリットは、工数の短縮にも繋がります。
単純に工程の数だけを考えると「ペルソナ設定」という工程が増えていますが、
- ライティングにかかる時間
- メンバーとの議論にかかる時間
- 提案や企画がボツになり再提案にかかる時間
が削減できます。
結果として、ほとんどの場合はペルソナ設定をした方が少ない工数で済むのです。
ペルソナ設定の具体的な方法とは
ここからは具体的に、ペルソナ設定の方法を学んでいきます。
ペルソナ設定は、時間をかけようと思えばいくらでもかけることができる工程です。
大規模案件の本格的なペルソナ設定は、ターゲットにアンケートをとったりと膨大な時間をかける場合もあります。
ですが普通は、そんなに時間をかける余裕はありません。
私がこれから紹介するのは、最低限のペルソナ設計を素早く行う為のテクニックです。
箇条書きで考える
ペルソナを考える際は、箇条書きがおすすめです。
「32歳の専業主婦で、家族構成は夫と5歳・2歳の男児がいて、渋谷に住んでいる。世帯年収は650万円で〜〜〜」と、いきなり文章で考えるのはわかり辛いだけでなく、抜け漏れがあったりとおすすめできません。
まずは必要な項目の洗い出しから始めましょう。
例)年齢、性別、仕事、家族構成、居住地、収入、生活リズム
洗い出しが終わったら、項目を順に埋めていく形でペルソナ設計を始めましょう。
- 年齢:32歳
- 性別:女性
- 仕事:専業主婦
- 家族構成:夫、子(5歳男児)、子(2歳男児)
- 居住地:東京都渋谷区
- 収入:650万円(世帯年収)
- 生活リズム:不規則、自分の時間が取れない
このように書いていけば、より簡単に抜け漏れなくペルソナ設定ができますね。
基本的な項目はテンプレートに
箇条書きで考える、と言ってもペルソナ設定のたびに箇条書きの項目を考えるのは大変です。
毎回必要になる項目はテンプレートにしておきましょう。
私が普段使っているテンプレートをご紹介します。
- 年齢や性別
- 居住地
- 家族構成、恋人
- 生活パターン(起床時間〜就寝時間まで)
- 学歴、仕事と役職、収入
- 趣味、流行への感度
- 健康、食事
- 性格や人生観
- 目標(短期〜中期〜長期)
- 抱えている問題や課題
- インターネット利用に関して(平均利用時間、使用するデバイス、など)
- 決裁権(有無、ない場合は誰がもっているか)
- 購買プロセス(衝動買いタイプ、じっくり検討タイプ、コスパ重視タイプ、など)
これが、私がペルソナ設定の際にテンプレートとして使っている項目です。自分で考えるのが面倒だという方は、このページをブックマークして是非上記のテンプレートをご利用ください。
紹介する商品やサービスによって追加する項目もある
当然ですが、記事のテーマごとに、テンプレートではカバーできない「追加項目」も出てきます。
例えば、
- 美容液を紹介する記事なら、月々の美容品購入額や毎日のスキンケアにかける時間。
- 本を紹介する記事なら、新聞の購読状況やよく見るTV番組、月間の読書量や好きなジャンル。
などなど、ライティングのテーマごとに追加で必要になる項目は様々なので、
回数をこなして徐々に慣れることが重要です。
前述の通りペルソナ設計は際限なく時間を掛けられるので、
「15分以内でできるだけ項目を出す」など工夫して行うのが良いでしょう。
ペルソナ設定の注意点
さて、これでペルソナ設定の基礎はわかりましたね。
といいたいところですが、実は大切な注意点がまだお伝えできていません。
ペルソナ設定はとても便利な反面、ライティングの効果を半減させてしまう落とし穴も存在します。
私は、「そのペルソナ本当にいるの現象」と呼んでいます。「そのペルソナ本当にいるの現象」とは、いつのまにか自分に都合の良いペルソナを作り出してしまうこと。
ペルソナ設定を常日頃から行なっているベテランライターでも、気をぬくとハマってしまう恐ろしい落とし穴です。
極端な例ですが、
例)20代前半女性。一般職。美容意識が高い。月収90万円。美容品に月30万円以上使う。
美容意識が高くて一般職の20代前半女性 まではわかりますが、月収90万円で月30万円以上を美容品に使う人はほとんどいませんよね。
ターゲットがこんな人なら楽だなぁ……という気持ちで都合の良いペルソナを作っても、記事の効果は想定と現実で大きく乖離してしまいます。
あくまでもペルソナを設定する際は、公正に現実的なペルソナを考えるようにしましょう。
まとめ
ペルソナ設定はなんとなく煩わしく思えますが、ライティングに欠かせないものです。
ターゲットとペルソナは異なることを理解し、ペルソナ設定を適切に行うことで、
- ユーザー目線でライティングする
- 他者とのイメージを共有する
- 提案や企画を通りやすくする
ことができます。
また、ペルソナの設定は難しそうに思えますが、
- 箇条書きで考えること
- テンプレートを利用すること
- 記事ごとに項目を使い分けること
で、基本的なペルソナ設定が短時間で行えます。
ただし、自分に都合の良いどこにも存在しないペルソナを作り上げてしまう、「そのペルソナ本当にいるの現象」には気をつけてください。
ペルソナ設定は、マーケティング全般で活用できるスキルです。
もしあなたがwebやマーケティングに関する仕事をしているなら、是非習得してください。
まずは当記事で紹介したテンプレートで、ペルソナ設定の第一歩を踏み出しましょう!